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【米連邦政府】チャオ運輸長官「PTC導入は急務」鉄道事業者「」

 

昨年末12月27日付けで、米運輸省長官のチャオ長官がクラス1鉄道事業者に向けてレターを発信。

 

そのレターの内容とは、「PTC導入は急務であり、2018年末までに導入を完了させるよう努力すること」というものでした。

 

では、アメリカの鉄道におけるPTCの導入度合いは果たして・・・?

 

 

さて、肝心のレターはこちらの米運輸省の公式HPで公開されていますので、原文が気になる方はこちらのURLから飛んでください↓

 

www.transportation.gov

 

レターの内容をざっくりと要約するとこうです:

  • 鉄道の安全って大事だよね。
  • で、PTCってその安全を担保する素晴らしいものだよね。
  • あ、このレターを受け取ったアンタも、そのPTCを導入する義務があるから。
  • だから議会で決められた通り、2018年末までにちゃんと導入してね。
  • 一応、私の部下には協力するように言ってあるから。

というものでした。

 

 

けっこうフワッとしてます。

 

 

2018年末までにPTCを導入するというのは、レターを受け取る側からしてみれば、

 

「そんなもん、言われなくとも分かっとるわ!いまやっとるわ!」

 

というレベルで当たり前なことなんですが…。

 

でも実際にこのレターにあるように、2018年末までにPTCを導入することは果たして現実的に可能なのでしょうか?

 

さて、それを検証するために現時点で米運輸省から入手可能なデータを整理すると、PTC導入が義務付けられている37社の鉄道事業者のうち…

  • 8社が連邦鉄道局(FRA)から「条件付きPTC導入証」を得ており、
  • 12社がPTC導入のための全ハードウェアを導入完了しており、
  • もう12社がPTC導入に必要な全ハードウェアのうち、50%未満を導入し、
  • 37社のうち、26社がPTC導入のため一部区間におけるフィールドワークを開始している…

だそうです。

【参考URL】(Background: Positive Train Control Enforcement and Implementation Act of 2015 | US Department of Transportation)

 

これらの数字を見ただけでも2018年末は無理そうだ、ということがわかりますね。

 

ちなみにもっと恐るべきことに、貨物と旅客路線に分けた場合のPTC導入率は

・貨物用路線のPTC導入率=45%

・旅客用路線のPTC導入率=24%

 

24%!?

 

低っ!!

 

つまり、アメリカの旅客鉄道では76%の区間、PTCという安全装置なしで走っているんです。

 

これを日本の鉄道…

 

そうですね…山手線に置き換えて考えてみると、

 

山手線は一周、34.5kmなので…

 

このうち76%は約26.2km…

 

34.5kmー26.2km=8.3km

 

駅間にすると、品川〜神田間(約8.1km)くらいでしょうか。

 

その区間は安全がPTCによって保障されている、ということです。

 

逆に、それ以外の区間は(ほぼ)ノーガードです。

 

なので、アメリカ版の山手線の車内放送は神田出発後、

 

車掌「え〜、ご乗車の皆様ァ…。これより当列車はァ…。品川までのォ…約26キロォ…私のミス一つでェ…エラいことにィ…んなりまァす…!」

 

なんて放送が流れるわけですよ。

 

いや、流れないけど。

 

こうして身近な例に例えるとヤバイですね、アメリカの鉄道状況。

 

PTCについても続報があればアップデートしていきます。

 

===轍娘===